ワキツレ
<名のり>
そもそもこれは後白河の院に仕へ奉る臣下なり。 さてもこのたび
先帝二位殿を始め奉り、 平家一門九州長門の国早鞆の浦にして
ことごとく果て給ひ候。 女院も御身を投げさせ給ひ候ふを取り上げ奉り、
かひなき御命助かりおはしまし候。 三河の守範頼、 九郎大夫の判官
義経兄弟供奉し申し、 三種の神宝事故なく都に納まり給ひ候。
さるほどに女院は都に移らせ給ふべかりしを、 先帝安徳天皇御菩提、
ならびに二位殿の御跡御弔いのために、 大原の寂光院に
憂き世を厭ひ御座候ふを、法皇御幸をなされ、
御訪ひあるべきとの勅諚にて候ふほどに、
御幸の山路をも申し付けばやと存じ候。
一見:いツけん 西国:さいこく 行脚:あんぎや 津の国:つのくに
浦:うら 磯辺:いそべ 様:やう 謂れ:いはれ
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