ゆく河の流れは絶えずして、 しかももとの水にあらず。
よどみに浮ぶうたかたは、 かつ消え、 かつ結びて、 久しくとどまりたる
ためしなし。世の中にある人の栖と、 またかくのごとし。
たましきの都のうちに棟を並べ、 甍を争へる高き賤しき人の住ひは、
世々を経て尽きせぬものなれど、 これをまことかと尋ぬれば、
昔ありし家は稀なり。 或は去年焼けて、 今年作れり。
或は大家ほろびて小家となる。
河: かは 浮ぶ:うかぶ 栖:すみか 棟:むね 甍:いらか
賤しき: いやしき 経て:へて 稀:まれ 或:あるい
去年:こぞ 今年:ことし 大家:おほいへ 子家:こいへ
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